脱炭素社会に向けて、
事業ポートフォリオの転換を推し進めます。

代表取締役社長 甲斐 敏彦
令和6年3月

株主の皆様には、平素より格別のご支援を賜り、厚く御礼申しあげます。
ここに日機装の事業概況をご報告いたします。

2020年のコロナ禍以降、ビジネスモデルの見直し、サプライチェーンの再構築、従業員の働き方など、当社が対処すべき経営課題は大きく変化してきました。なかでも、2022年にインダストリアル事業の中核であったLEWA社およびGeveke社の全株式を譲渡したことは、脱炭素社会の構築と新エネルギーへの転換を実現するための機器メーカーという新しい日機装が目指す会社の骨組を形作るうえで重要な一歩となりました。
当社は、こうした環境の変化や経営課題に対応するとともに、「ものづくりで、社会の進化を支え続ける」という当社の存在意義に立ち返り、中期経営計画「Nikkiso 2025 フェーズ2」を策定しました。中計フェーズ2は、脱炭素関連の新市場拡大など長期的に目指す姿からバックキャストして策定しており、この3カ年を2025年以降の本格的成長に向けて経営基盤を固める期間と位置付け、スタートしています。

中計フェーズ2の中間年度となる2024年12月期は、計画の達成に向けて、事業構造の転換、収益力の強化を着実に進めていきます。通期の業績予想としては、受注高2,240億円、売上収益2,130億円、営業利益90億円、税引前利益91億円、親会社の所有者に帰属する当期利益62億円と見込んでいます。

インダストリアル事業については、LNGや水素関連の投資が引き続き拡大する見通しで、増収・増益を見込んでいます。LEWA社及び Geveke社の株式譲渡後、低・脱炭素中心の事業ポートフォリオへの転換を図っていますが、CE&IGグループを中心に事業規模は拡大基調にあり、中計フェーズ2で掲げる売上目標に手が届く水準になってきました。
一方、収益性の改善はまだ道半ばにあります。受注採算を重視し、事業運営の効率化を図るため、従来からの営業手法の改善にも着手しています。日機装の強みを生かしたビジネス手法を模索しながら、事業の成長過程における人件費や先行経費の増加を吸収していきたいと考えています。 当面はCE&IGグループの事業拡大を柱とする業績改善を図りますが、アンモニアや水素関連の事業化が本格化すると見込まれる2025年以降に向けて、東南アジアや欧州での日機装とCE&IGグループの協業体制の確立や、日本における関連基礎技術の開発、製品化を加速するべく、従来以上に注力していきたいと考えています。
当社は、水素航空機向け液化水素ポンプの実液試験、火力発電所向けアンモニアポンプ開発など次世代エネルギー関連の技術開発を強化しており、グローバルな生産体制の構築と併せて、脱炭素関連の事業ポートフォリオへの移行を推し進めてまいります。

航空宇宙事業については、産業全体のサプライチェーンの再構築に想定より時間を要してきましたが、2024年から航空機の 生産量も本格的に回復するとみられています。また、エアバス社製小型機 A220向け新規部品の出荷開始によるベトナム・ハノイ工場の稼働回復に伴い、収益性の本格的な改善を見込みます。
そのほか、次世代交通手段eVTOL、商業用小型人工衛星分野の取り組みなど、収益基盤安定化に向けた事業領域の拡大も併せて進めてまいります。
メディカル事業については、血液透析装置の 需要は国内外で引き続き堅調に推移すると見込んでおり、装置販売の増収を目指します。
一方、収益面では、米国市場向け装置の販売許認可の 取得に係る経費や研究開発関連の費用増加の影響もあり、2023年並みの営業利益に留まる見込みです。抜本的な収益力の改善に向けて、主力である血液透析事業以外の周辺事業の見極めによる最適な事業ポートフォリオの構築も併せて検討を進めてまいります。

当社を取り巻く事業環境が目まぐるしく変化している今日、長期ビジョンを見据え、それを実現していくために、2024年12月期を当社グループの長期的な成長の礎を築く重要な年として経営基盤の強化に取り組んでまいります。