水銀ランプに替わる、次世代の光源として期待される深紫外線LED

2014年、日本人3人がノーベル物理学賞を同時受賞した「青色発光LED」。これに続く新技術として注目されているのが「深紫外線LED」です。紫外線の中でも波長が短い領域に属する深紫外線は、高い殺菌能力をはじめとした特長を持ち、水や空気の殺菌をはじめ、医療や工業など、多分野へ応用が期待されています。
これらの用途では、これまでは「水銀ランプ」が使われてきましたが、水銀の人体や環境への有害性から、水俣条約により2020年をめどに取り扱いが制限されることになりました。深紫外線LEDはそうした悪影響が極めて少ないうえに、コンパクトで省エネ・長寿命というLEDならではの特長を持つ、まさに“次世代の光源”です。
日機装は、2006年から深紫外線LEDの実用化に向けた取り組みを開始し、リーディングカンパニーとして業界を牽引してきました。

積層セラミックコンデンサー
深紫外線の領域
深紫外線の領域

ノーベル賞受賞者とともに、深紫外線LEDの実用化をめざす

日機装が深紫外線LEDに着目したのは2006年のこと。当時、研究者の間で、紫外線は365nm以下の短波領域での実用化は技術的に難しいとされていました。しかし、その将来性に大きな期待を寄せていた当社は、のちにノーベル物理学賞受賞者となる、天野浩教授(名古屋大学)の指導を仰ぎ、2008年、わずか数十μWではありましたが、初めて深紫外線LEDの発光を確認。さらにその3カ月後には、1mWの安定的な発光に成功しました。
そして2010年にはついに外部量子効率3%超の安定的な発光を達成し、実用に耐えうる性能・品質の実現に至りました。他の研究機関や企業での実績は1%程度という中、世界記録を一気に更新するこの結果は、一躍業界の注目を集めることとなりました。

  • ※外部量子効率=外部に放射される光の割合、光の取り出し効率
天野浩教授(写真左)と日機装・甲斐敏彦社長
天野浩教授(写真左)と 日機装・甲斐敏彦社長

実用化、そして安定的な量産化へ

実用化が可能となれば、次にめざすのは量産化体制の確立です。大量生産を可能とする歩留りの向上や安定的な品質維持の研究を行うとともに、外部量子効率10%以上の達成を実現しました。そのうえで満を持して2014年、「白山工場」(石川県白山市)を設立し、初期量産体制が整いました。世界で初めて30mWの光出力と10,000時間以上の寿命を両立する深紫外線LEDの製品化に成功したのは翌2015年のことでした。
現在は、大容量の流水殺菌ができる深紫外線LED水殺菌モジュールや、水産業向け深紫外線LED浄化装置などを開発提供しています。当社は「装置メーカー」として、今後も新しい技術開発に力を入れつつ、これまでに例のない、まったく新しい製品を生み出すことで社会に貢献することをめざしています。

深紫外線LED(セラミックパッケージ)
深紫外線LED(セラミックパッケージ)
深紫外線LED(canパッケージ)
深紫外線LED(canパッケージ)