本マイクロポンプはμL/minオーダーの微少な流量を送液するための圧電素子駆動ダイアフラム式ポンプです。従来の電磁モータを用いたシリンジ式やプランジャ式などの微少流量ポンプに比べて、コンパクトサイズであることが大きな特徴です。また、アクチュエータである圧電素子は低消費電力なことから、電池による運転ができます。よって、既存の装置/システムの小型化はもちろん、携帯型の機器への組み込みといった新しいポンプの使い方も可能になります。
本ポンプは、容積変化するポンプ室とその上流および下流に整流するための逆止弁を備えた構造から成ります。ダイアフラムを、電圧印加によってひずみを生じるセラミックスである圧電素子によって駆動することで、容積変化させ送液します。ポンプ室内が膨張することで流体を吸い込み、次に収縮することで流体を吐出し、これを繰り返して送液するという、心臓が血液を送るのと同様の原理です。送液の様子はビデオ1をご覧ください。なお、これらの構造は、半導体製造方法を応用した微細加工技術であるMEMS(Micro Electro Mechanical System)によって製造しています。
外観写真とその仕様を示します。MEMSで製造したガラスチップをセラミックパッケージに収めています。手前の2本のパイプは流体の出入り口、奥の2本のピンは電気配線のコネクタです。このモデルはひとつの設計例であり、この他にもユーザの要求仕様(流量・圧力など)にあわせた設計をすることができます。

仕様
| 流量 | 1~50μL/min (駆動周波数により制御) |
|---|---|
| 圧力 | 最大30kPa |
| 印加電圧 | 120V |
| 消費電力 | 10μW以下 |
| 材質 | ガラス、単結晶シリコン |
| 寸法 | 22mm×16.5mm×4mm |
取り扱い可能な流体
ポンプの主な材質はガラスと単結晶シリコンのため、耐薬品性に優れています。一部のアルカリ溶液を除いて、酸、有機溶剤など多くの流体を送液可能です。ただし、粘度の高い液体や粒子を含む液体は送液できないことがあります。
液体/気体両用
本マイクロポンプは液体だけでなく気体も移送できます。一般に気体は圧縮性流体であるため、液体の場合とは異なる工夫を要しますが、ここではポンプの行程容積とすきま容積の割合である圧縮比を大きくした設計にすることで実現しています。したがって、ポンプ使用前のユーザによる呼び水は不要です(自己プライミング可能)。また、ポンプ室内への気泡の混入によるポンプ性能低下がほとんどありません(耐気泡性能向上)。
さらに、バイアル内を加圧することで空気を介して液体試料を送り出したり(ビデオ2参照)、逆にスポイトのように液体試料を空気で吸い上げたりすることもできます。
無脈動タイプも可能
本マイクロポンプのような容積型ポンプは、単独で動作させた場合流量に脈動が生じます。これはポンプが吸込行程と吐出行程を交互におこなうためです。用途によってはこの脈動がシステムに悪影響を及ぼすこともあるため、無脈動タイプのポンプが必要になります。このタイプは2つのマイクロポンプを並列に配置し、かつ逆位相で動作させることで脈動を打ち消し合うもので、無脈動の流れを得ることが出来ます(ビデオ3参照)。
ビデオ1
通常の液体の送液
(周波数1Hz、流量10uL/min)
ビデオ2
バイアル内を加圧し空気を介して液体試料を送液
(周波数20Hz、流量200uL/min)
ビデオ3
無脈動タイプでの送液
(周波数1Hz、流量20uL/min)
日機装では、半導体製造方法を応用した微細加工技術であるMEMS(Micro Electro Mechanical System)によって、マイクロポンプを始めとするマイクロ流体デバイスの開発をおこなっています。これらのマイクロ流体デバイスは、μTAS(Micro total analysis system)とよばれるチップ上の微小な流路内で分析するシステムや、POCT(Point of care testing)とよばれる医療の現場で迅速な検査をする際に使われる機器などで欠かせない技術になると考えています。
マイクロポンプ
マイクロミキサ
マイクロ流量計
電気化学センサ
(2005年11月9日)
株式会社 日機装技術研究所
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