
監修 昭和大学藤が丘病院 栄養科 菅野 丈夫先生
現在の透析患者さまの食事管理において、一番難しいのはリンのコントロールだと思います。
今回は、リンが高い時(高リン血症)の食事の注意点についてお話します。
"リン"とはいったい何?
リンは、体にとって大切な栄養素の1つで、カルシウムと結合して骨や歯の材料になったり、リン脂質として細胞膜の成分になったりなどの重要な働きをしています。
リンは、からだの中で作ることができないため、私たちは食事からそれを補っています。ただ、食品にはたくさんのリンが含まれているため、普通に食事を食べると、からだにとって必要以上のリンを摂取する結果となります。しかし、腎臓が正常であれば、食事で摂りすぎた分のリンはすべて尿の中に排泄することができるため、からだ(血液)の中にリンが溜まることはありません。ところが、腎不全になると腎臓から余分なリンを排泄することができなくなるため、血液の中にリンが溜まるようになってきます。
血液の中にリンが溜まってくると、副甲状腺ホルモンというホルモンがたくさん分泌されるようになり、それによって骨が弱くなったり、血管に石灰が沈着し、動脈硬化を起こすようになってきます。
したがって、腎不全の患者さまは、食事からのリンの摂取量を極力控え、血液中にリンが溜まらないようにコントロールする必要があるわけです。
食品中のリンの特徴
食事からのリンの摂取を控えるためには、まず食品中のリンの特徴を知っておくことが大切です。
食品中のリン含有量は、タンパク質含有量ときわめて強い正の相関関係にあります。(図1を参照してください)つまり、タンパク質の多い食品ほどリンが多いという傾向にあるわけです。タンパク質の多い食品とは、肉類、魚介類、卵、乳製品、大豆製品など、おかずの中心となるような食品です。この中でも、カルシウムの多い食品にリンが多いという傾向にあり、乳製品や骨ごと食べられる小魚などにはリンが多く含まれます。
また、食品中のリンはカリウムと違って、茹でこぼしたり、水にさらしたりしても減ることはありません。つまり、調理操作による変動がほとんどないのです。
したがって、リンを控えるためには、これらの食品の食べすぎを控えることが大切となります。
透析患者さまの1日のリンの摂取量
日本腎臓学会では、週3回の血液透析を受けている患者さまの場合、1日のリンの摂取量を700mg以下にするように勧めています。
しかし一方で、1日のタンパク質は標準体重1kgあたり1.0~1.2g摂るようにも勧めています。この量は、身長165㎝の人で約60~70gとなります。食品中のリンは、タンパク質含有量と正の相関関係にあることはすでに述べましたが、タンパク質を60~70g摂取すると、どんなにリンの少ない食品を使っても1日のリンの摂取量は、700~900mgとなり、700mgをオーバーしてしまいます。
今の透析の栄養基準ではこのような矛盾が生じており、これがリンのコントロールを困難にしている1つの原因となっているのです。みなさんも、先生から、「リンの多い食品は控えなさい。但しタンパク質は少なくならないようにしなさい」などと言われたことがあるのではないでしょうか。このこと自体、無理な話なのです。
リンの摂取量を控えるポイント
- タンパク質の過剰に注意する
タンパク質の過剰摂取はリンの過剰摂取に直結しますので、タンパク質過剰の場合はそれを是正する必要があります 。
タンパク質が過剰になってないかどうかをチェックするために一番良い方法は、食品を計量し、それを記録して食品成分表を使って栄養計算をすることです。すべての食品の計量が困難であれば、肉類、魚介類、卵、乳製品、大豆製品などのおかずの中心となるものだけでもやってみてはいかがでしょうか。
その他のチェック方法としては、透析前のBUN(尿素窒素)の値を目安とする方法があります。透析前のBUNが80mg/dl以上であれば要注意であり、特に100mg/dl以上であれば完全なタンパク質過剰です。
タンパク質過剰の場合は、肉類、魚介類、卵、乳製品、大豆製品などのおかずの中心となる食品を減らしてみましょう。そうすれば自動的にリンの摂取量も減らせます。 - リンの多い食品を控える
タンパク質の多い食品の中でも、特にカルシウムの多い食品にリンが多い傾向に ありますので、「リンが高いですよ」と指摘された場合には、乳製品や骨ごと食べられる魚などは控えましょう。
- 軽いタンパク制限を行う
特にタンパク質の過剰がないのにリンが高いという場合は、軽いタンパク制限を行なうのも1つの方法です。この場合、1日のタンパク質を標準体重1kgあたり0.8g程度とします。(身長165cmの人で約50g)しかし、タンパク質を制限するとエネルギーも減ってしまうため、エネルギー補給用の特殊食品を使ってエネルギー不足にならないよう配慮することが大切です。
大まかな方法を説明すると、肉類、魚介類、卵、乳製品、大豆製品などのおかずの中心となる食品を1/4~1/3程度減らします。その代わり、でんぷん製品や、こなあめ、MCT製品などのエネルギー補給用の特殊食品でエネルギーを補います。
その他に気をつけること
リンを抑える薬(リン吸着薬)の多くは食後すぐに服用しないと効果がありませんので、薬を飲むタイミングがずれないようにしましょう。
また、透析患者さまの高リン血症の原因は、食品からのリンの取り過ぎだけでなく、透析不足などいろいろなものがあります。
したがって、何が高リン血症の原因かを主治医の先生とよく相談し、それに対し適切な対応を取ることが大切です。



















