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積層電子部品・基板積層に用いられる温水ラミネータ

2005年04月25日

1.温水ラミネータの応用範囲


図1 パスカルの原理
セラミック電子部品のグリーンシート積層工程において、広く使用されている温水ラミネータは、等方圧プレスの技術を応用している。
等方圧プレスとは、図1のようにパスカルの原理で、静水圧状態において圧力媒体を通じ、全方向から均一に物体を加圧する装置である。深海1,000mにある物体には、水圧を受けて約100MPaの等方圧が作用している。これと同じ理屈である。
最初の等方圧プレス装置は、1913年に、米国のウエスティングハウスランプ会社が、粉末タングステンやモリブデンから、フィラメント用の線材を成形するために考案されたものとされている。
その後、耐火物のパイプや、スパークプラグなど、特殊形状を製造する過程に応用され、第二次世界大戦時には、特殊金属やセラミックの成形用として、装置が大型化された。
セラミックでの応用としては、アルミナ、シリカ、マグネシア、クロマイト、ジルコニアなどの耐火材料や、カーボン製品、サーメット、フェライトなどの成形用として使用されてきた。粉末冶金では、高融点の耐火材料、超硬金属、工具鋼などが挙げられる。その他、テフロンなどのプラスチック、樹脂の成形にも利用されている。
 国内では特に、20年程前から、従来の粉末を成形する用途から、テープ成形の分野での等方圧技術が開発された。積層セラミックコンデンサ(MLCC)を始めとするグリーンシートの積層工程で の使用が代表例である。コンデンサ以外では、インダクタ、サーミスタなどの積層電子部品や、低温焼結多層セラミック基板(LTCC)の圧着においても、温水ラミネータが使用されている。
最近では、積層用途以外でも、電子部品業界において、基板の圧着、圧接や、実装、フィルムラミネーションなどで、温水ラミネータが応用されている。(図2)
 また、使用される圧力は、各応用用途によって異なるが、セラミック粉の成形では、200MPa以下、粉末冶金の用途では400MPa以下、グリーンシートの圧着では、50~200MPaが一般的である。
当社の温水ラミネータは、特にセラミックコンデンサ用途として、数百台の実績があり、国内外の製造メーカーに採用されている。その外観を写真1に、使用例を表1に示す。

図2 温水ラミネータの応用

写真1 温水ラミネータの外観
表1 使用例
圧力容器内径
プレス圧力
使用温度
使用媒体
 
150~400φ
30~400MPa
室温~120℃
水(~90℃)
油(~120℃)

2.等方圧の利点

金型プレスや一般の機械プレスのように、一軸方向から加圧する場合と比較して、等方圧で加圧した場合の利点を列挙する。

(1) より高密度のグリーン体が得られる
温水ラミネータでは、同じ面圧において、より高密度のグリーン体(焼成前の成形体)が得られる。特に、微細粉での成形性に優れた効果がある(図3)
これは、金型プレスでは、金型やパンチ部の摩擦で生じる圧縮時の残留応力が発生し、作用圧力が低減されるからである(図4)
また、金型プレスでは脱気が困難であるが、等方圧プレスでは、成形体を真空パックする時点で脱気ができ、より成形性が向上する。

図3 同一成形体密度になるための成形圧の比較

図4 金型プレスでの密度分布2)

(2) 密度のばらつきが少なく、均一で、サイズや形状にも影響されない
機械プレスでは、押し型の平行度を維持することが煩雑であるし(図5)、材料の表面形状や組成にも影響され、均一な加圧ができない。また、機械プレスの推力が大きくなると、プレスフレーム自体の変形も考慮しないと、平行度を保てないので、密度のばらつきが生じる。この結果、焼結時には、密度の高い個所は収縮率が小さく、密度の低い個所は収縮率が大きくなり、寸法精度が狂ってくる。
   
(3) グリーン体の強度が高い
金型プレスと比べるとグリーン体強度は圧倒的に優れている。
   
(4) 収縮率が均一で、寸法精度や焼結時の強度が優れる
図6のように、等方圧の場合は、加圧力と収縮率との関係が、機械プレスに比べ直線的であって、収縮率のばらつきが少なくなっているのが特徴である。
成形性がよいため、焼結時の収縮率や不均一な組成に影響を与える有機結合剤、添加剤や潤滑剤などの成形助剤の量を減らすことが可能となる。したがって、焼結時の収縮率と寸法精度をより正確に制御することができる。この結果、変形やクラックの発生、スクラップロスなどの不良を減らすことができる。

図5 機械プレスでの平行度の調整


図6 プレスによる収縮率の違い3)

(5) 均熱性能に優れる
ホットプレスや雰囲気炉では、気体を熱媒体としているのに対し、等方圧プレスでは、数百倍、熱伝達係数が高い水などの液体を使用する。加熱性能や均熱性能(図7)が高いため、速くバインダが軟化する。このため、機械プレスに対して、温度、圧力、保持時間などの条件を低くすることができる。
図7 加熱方式の均熱性テスト

(6) 乾燥状態で処理が可能
ゴム型や、真空パックに入れた状態で処理されるため、大気に触れず、処理中に湿分を吸収しない。予備乾燥工程を省略して直接、焼結炉に入れられる。
   
(7) 最終製品の性能が向上する
曲げ強度や、耐磨耗性、硬度が向上する。積層の用途では、層間のデラミネーションの減少や、剥離強度が向上し、性能のばらつきが少なくなる。(図8)
   
(8) 生産性が高い
一般的に、同じ推力で比較すると、機械プレスに比べ3~5倍、処理能力が大きい。一方、装置質量は、軽くできる。また、高価な金型代が要らない。

図8 積層シートの剥離テスト

3.温水ラミネータの運転動作

当社の温水ラミネータの動作について説明する。まず処理品は、予め真空パックされ、容器内へ投入される。
圧力容器の構造は、ピンクロージャ方式で、上蓋下降―ピン入の簡単な動作で、昇圧準備が可能となる(図9)。容器自体が、温水槽に浸漬され、温水が絶えず循環する構造のため、温度の均熱性に優れる。上蓋にはオートベントバルブが組込まれ、自動的に給排水ができる。昇圧や減圧は、構造が簡単な空気駆動ポンプやバルブを使用しているため、メンテナンスが容易である。
ピン出―上蓋開によって再び、上蓋に吊り下げられた処理品が取り出されるまで、動作はすべて自動となる。

図9 温水ラミネータの構造

4.最新仕様例

LTCCやMLCCの積層などでは、使用温度が比較的高く、均熱にするための予熱時間を数十分必要とする用途がある。
 従来は、圧力容器の中で予熱工程を行っていたが、熱量が大きい予熱槽を装置内に別途設けることで予熱時間を短縮できる装置を開発した(写真2)。ワークを投入するバスケットを、予熱槽から加圧容器と取り出し位置に搬送するための機構も備えている。
予熱工程、加圧工程と取り出しセット工程の合計3ヵ所で平行して同時に工程が処理できるために、全体の処理時間が半減され、生産性が2倍になっている。

写真2 自動搬送機構付き新型温水ラミネータの外観

参考文献

1) 素木:セラミック製造プロセスII、技法堂、P173(1978)
2) 斎藤:ファインセラミックの活用(上)、大河出版、P26(1986)
3) NEC真空硝子、「ガラスセラミックグリーンシート GCSシリーズ」カタログ

電子材料 vol.44 掲載記事

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